リスクを正しく知る【リスク許容度】

投資戦略

はじめに

私は、投資を始めるまで、「リスクを取ること=悪いこと」だと思っていた。

だから、詐欺にあったときも、「元本保証」「低リスク」という言葉を聞いて、「これなら安心だ」と疑わなかった。リスクを取らないことが正義だと信じていたから、むしろ積極的にその罠に飛び込んでしまった。

全財産を失ったのが30代だったことは、不幸中の幸いだったかもしれない。まだ取り戻せる時間があった。気力もあった。でも、50代を目前にした今、もし同じことが起きたら——正直、立ち直れる自信はない。

こんな失敗を重ねてきた私だからこそ、皆さんに同じ目に遭わないよう、リスクについて、全身全霊でお伝えしたい。

リスクとの距離感

「ノーリスク・ノーリターン」という言葉がある。リスクなしにリターンは得られない、という至極シンプルな真理だ。
100万円を銀行に1年預けて、手取り約2,400円(普通預金 約0.30%)。スタバのラテ4杯分だ。悪くない——と思いきや、インフレ率が2%で動いている今、購入力は年間2万円分目減りする。差し引き約1万7,600円のマイナスだ。ラテどころか、気づかないうちに財布から栄一が抜けている計算だ。それがノーリスクの現実だ。

一方、「ハイリスク・ハイリターン」は、FXや仮想通貨、そして私がはまった海外FX自動売買のような世界だ。年利15%、20%を謳う話は大抵ここに属する。夢のような数字の裏には、それに見合った、あるいはそれ以上のリスクが潜んでいる。私はそこで100万円を3日で失った。
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リスクは決して悪ではない

リスクは、決して悪ではない。むしろ、「リスクがゼロです」と言われたものこそ、疑ってかかるべきだ。リターンには、必ずリスクが伴う。これは資本主義の鉄則だ。 一番大切なのは、自分のリスク許容度を知ることだと思う。そして、それはすぐに身につくものではない。「長期・積み立て・分散」を10〜20年かけて実践することで、少しずつ経験として積み上がるものだ。収入、家族構成、年齢、性格——人それぞれに、違う正解がある。自分の答えは、自分で見つけるしかない。インデックス投資だからといって、リスク許容度を考えなくていいわけではない。

たとえば、リスク許容度が比較的高い人の例を挙げるとすれば、共働きで収入が安定しており、子どもが独立している40〜50代、または独身で生活費以外の余裕資金がしっかりある人だ。万が一資産が半分になっても、生活は揺らがない。だから心理的に耐えられる。

逆に、リスク許容度が低い人の例は、住宅ローンや教育費など大きな支出を抱えている40代、あるいは定年が近く残り時間が少ない50代後半以降の人だ。そういう人が1,000万円の資産を持ち、それが暴落で半額になったとき、精神的に耐えられるだろうか。おそらく耐えられない。だからこそ、年齢と状況に合ったリスクを取ることが大切なのだ。

S&P500やオルカンは安心なの?

新NISAが始まり、「S&P500やオルカンなら安心」と思っている人が本当に増えた。実際、私の周りでも投資を始めたばかりの人に話を聞くと、「これ買っておけば大丈夫でしょ、簡単簡単」という反応が多い。気持ちはわかる。私もそう思っていたことがある。

だが、実際のところ、S&P500もオルカンも、れっきとしたリスク資産だ。1年という短い時間軸で見れば、上にも下にも50%近く動く可能性がある。

資産が50万、100万のうちは、暴落して半値になっても、まだ心に余裕があるかもしれない。でも、10年後、コツコツ積み立てた資産が1,000万円を超えたとき、それが一瞬で500万円になったとしたら——どれだけの人が、パニックにならずにいられるだろうか。S&P500やオルカンが「ハイリターン」を生む理由は、それだけの「ハイリスク」を背負っているからなのだ。

ではそのリスクを、どう軽減するか。答えは「長期投資」だ。時間を味方につけることで、リスクは大きく変わる。

暴落が来たとき、あなたは耐えられますか?

S&P500は過去に何度も大きな暴落を経験してきた。そして、そのたびに必ず立ち直ってきた。
「2000年以降の代表的な下落と回復期間」
ITバブル崩壊(2000年〜、約-49%)→ 回復まで約7年
リーマンショック(2008年〜、約-57%)→ 回復まで約5年
コロナショック(2020年〜、約-34%)→ 回復まで約半年〜1年

これらを平均すると、おおよそ3〜5年で元の水準に戻っている
ただし、回復までのスピードには大きな差がある。短期間で戻ることもあれば、数年かかることもある。

そのため、S&P500に投資する上で本当に大切なのは、
「暴落が来るかどうか」ではなく、「その暴落を耐え切れるかどうか」だ。暴落は必ず来る。問題は自分がそれに耐えられるかどうかであり、それを決めるのが「リスク許容度」なのだ。

リスク許容度からの出口戦略を考える【S&P500やオルカン】

S&P500やオルカンが、過去の実績として平均年率8〜10%のリターンをもたらしてきたのは事実だ。ただしそれは、15〜20年という長い時間をかけて積み立てを続けた場合の話だ。新NISAを始めた多くの人が、じゃあ出口はどうするか、まで考えて投資しているかというと、正直、少数派だと思う。

出口戦略を考えるには、まず問いに向き合う必要がある。
「目標金額はいくらか」「いつまでに必要か」「子どもの大学資金」「住宅ローンの完済」
「老後に毎月いくらあれば生活できるか」「何歳から年金をもらうのか」

これらに答えられて、初めて「どう取り崩すか」が見えてくる。

私自身、まだ完全な答えを出せていない。ポートフォリオをどう組み替えるか、会社員をいつまで続けるか、次々に改正されるiDeCoのルールをどう組み込むか、税金はどうなるか——考え始めたらきりがない。

だからこそ、大切なのは投資スタイル「シンプルにすること」だと思う。自分のリスク許容度を見極め、無理なく続けられる範囲で出口を設計すること。例えば、病気や認知症になってしまったとき、自分で運用ができなくなり家族にお願いするとき、資産をできるだけシンプルな状態にしておくことが、家族への最大の配慮だと思う。複雑に絡まった資産を、少しずつ整理していくこと。それが一つの答えだと、今は思っている。

まとめ

多くの人はリスクを避けようとする。でも同時に、大きなリターンを求める。
その矛盾が、詐欺師たちに狙われる人を、量産してしまった。「元本保証で高利回り」——この言葉に惹かれてしまう気持ちは、私も痛いほどわかる。退職金や老後の資金で詐欺に遭ってしまったとき、もう取り返す時間はない。

まずは、自分のリスク許容度を知ることから始めてほしい。それは難しい話ではない。
「もし今の資産が半分になっても、生活は続けられるか」
「その状態でも売らずにいられるか」

この2つの問いへの答えが、あなたのリスク許容度そのものだと思う。

まず、リスク許容度を知り、自分の人生設計と照らし合わせること。そこから初めて、「お金のために働く人生」から「お金に働いてもらう人生」へと、確実に近づいていけると信じている。

オーストラリアにいたとき、映像プロデューサーの恩師にこう言われたことを思い出した。

「Work to live, don’t live to work.」
生きるために働け、働くために生きるな。

あの言葉の意味が、今ならわかる気がする。。。